不動産の相続でよくある問題。こんな時どうなるの?

ずっと不動産の名義変更がされていないと・・・

農地を含め、たくさんの不動産を所有する夫が亡くなりました。子供はおらず、奥さんとの2人暮らし。

残された奥さんも高齢で1人での生活が困難であるため、介護施設へ入所。

奥さんは、今後自宅に戻ることは困難であるため、自宅を売却すべく不動産の登記を調査したところ、夫の父の名義のままとなっていました。夫の父は既に亡くなっていますが、その際、遺言書や遺産分割があった形跡はありません。

そのため、夫の父の代からの相続人を調べる必要がありました。調査により判明した相続人は20名弱。中には全く面識もない相続人もいました。

この自宅を売却するためには、この相続人全員と協議をする必要があるため、遺産分割協議案を提案。かなりの財産がありましたが、法律上、そのほとんどが奥さんのものであり、残りを20名弱で分けるという法律に定められた通りの内容でした。

しかし、その面識のない相続人から強い反発があり、話がまとまらず売却が進められません(もっと取り分をよこせとのこと)。結局、未だに話し合いはまとまっておらず、今後、裁判所で争うことになるでしょう。

この話は、若干脚色してありますが、私が法律事務所で実際に携わった案件です。これは決して珍しい話ではなく、似たような案件はよくある話なのです。

登記を確認しておくことは重要

本来は、相続が発生した場合、相続人間で遺産分割協議を行い、それに基づいて相続登記をします。

しかし、上記の事案のように、そのような遺産分割協議も相続登記もなされず、ずっとそのままになっていることは多々あります。

相続の登記が完了していない間は、その不動産は各共同相続人間で共有の状態になります。そして、相続の手続が終わらないまま共同相続人の誰かが亡くなると、その亡くなった相続人の共有持分は、更に次の代に相続されます。したがって、ずっと相続の手続きをしないでいると、どんどん相続人が増えていき、上記事案のように全く面識のない相続人同士で話し合いをしなければならなくなるのです。こうなると、話し合いをまとめるのはかなり大変ですよね。

実際、国土交通省の資料によると、ある河川改良工事のために用地を取得しようとしたところ、その用地の最後の登記が明治時代であり、相続人を調査したところ、その相続人は242名で、そのうち行方不明者が3名含まれており、交渉開始から約2年経っても解決方法を検討中ということです。国の機関ですら、このように困難なわけですから、一般の人はどれだけ大変かお分かりいただけると思います。

不動産の登記情報は、全国の法務局で誰でも簡単に取得できますので、代々受け継いできた土地に住まれている方は、一度自宅の土地・建物の登記を確認してみてください。

最終的には相続登記が必要。専門家も利用して対処しましょう。

相続した不動産を売却する場合には、亡くなった方の名義のままでは売却することができません。

相続が発生したのであれば、相続による所有権移転登記が必要となり、その際には相続人全員の実印が必要になります。

そのため、相続人間での話し合いは必ず必要になりますので、個人で対応するのが困難な場合は、弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。