遺産分割協議の進め方①(相続人調査)

遺産分割協議をはじめるには

最近は、相続に関する話題をよく耳にするようになりました。

つい先日も、私がお手伝いをしている弁護士さんが相続に関するセミナーを開いたところ、満員の大盛況だったとのことです。皆さんの相続に関する意識が高まってきているということでしょうね。

さて、相続の流れや遺産分割等につきましては、以前にも概要を書きましたが、もう少し詳しく書いてみようと思います。

相続が発生して、相続人が複数いる場合において、遺言書で遺産の分け方について定められていない場合は、単純に法定相続分の割合で相続するか、相続人全員による遺産分割協議において、遺産の分け方を決める必要があります。

相続財産に土地・建物等の不動産がある場合で、特定の相続人にその所有権を移転したいという場合は、相続人全員の協議によって作成された遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑証明書を添付して手続きする必要があります

この遺産分割協議をする際には、相続人全員が参加する必要がありますので、まずは誰が相続人となるのか、相続人を確定する必要があります。法律に定められた相続人が一人でも欠けていた場合は、その遺産分割協議は効力がありませんので注意が必要です。

相続人が誰か調査する

相続人を確定するためには、戸籍をたどって探していきます

一般的に、相続人は、親、子、兄弟姉妹などが考えられますが、実際に戸籍をたどってみると、過去に認知した子がいるとか、養子縁組していたりとか、知らなかった事実が出てくることがよくあります。そのため、相続人調査が必要となってくるのです。

相続人調査のやり方

具体的に何をやるかというと、被相続人(亡くなった方)が生まれてから亡くなるまでのことが記載されている全ての戸籍を取り寄せます。戸籍は、結婚や転籍、法改正などにより新しく作成されますが、古い戸籍の際に抹消されたところ(結婚、離婚、死亡などにより×が付けられ消されているところ等)は、新しい戸籍になった場合は記載されないので、古い戸籍(除籍、原戸籍といわれるもの)も全て取り寄せる必要があります。

法律事務所にいると、相続人調査で戸籍を調べる機会も多いのですが、こればかりは取り始めてみないと、どれだけ取り寄せが必要になるかわかりません。ひとつ前の原戸籍を取って終わる場合もあれば、全国に何か所も転籍していたり、結婚・離婚を繰り返していたりで、膨大な量の戸籍を取り寄せなければならない場合もあります。

戸籍はどうやって集めるか?

戸籍を集める場合は、亡くなった方の本籍があった役所の市民課等に出向いて取得するのが一般的ですが、全国各地に転籍している場合など、出向くことが難しい場合は、郵送で取り寄せることも可能です。その際は、申請書と併せて定額小為替(現金に代わる証書)を郵便局で購入して送ることになります。

遺産分割協議を弁護士や司法書士等の専門家に依頼している場合は、依頼を受けた専門家の方で、専用の職務上請求書で取り寄せることが可能です。

相続関係説明図の作成

相続人調査が終了し、相続人が確定した後は、相続関係説明図を作成します。

相続人や被相続人の名前や生年月日、死亡日等を記載し、それぞれの関係性が分かるように線で結んで、家系図のようにまとめます。

この相続関係説明図は、裁判所や法務局などの手続の際にも添付する必要があります(不動産登記で添付する場合は、本籍や住所、登記上の住所なども記載が必要です)。

遺産分割協議をする

相続人調査が終了し相続人が誰か分かったら、その相続人全員で、遺産をどのように分けるか話し合い、遺産分割協議書を作成していきます。

遺産分割の内容については、特に決まりは無いので、例えば、預貯金等の金融資産については分け方が決まっていないが、とりあえず実家の土地・建物だけは長男が相続することが決まっているというような場合もあると思います。その際は、土地・建物を長男が相続するという内容と、その他の財産については別途協議するという内容を記載した遺産分割協議書を作成することになります。

また、不動産がある場合の遺産の分け方としては、現物分割、代償分割、換価分割の3種類がありますが、それぞれのメリット・デメリット等については、また次回書きたいと思います。

 

このように、相続に関する手続きは、相続人を確定させるだけでも手間がかかる場合があります。

相続はいつ何時発生するか分かりません。自分が相続する側、される側どちらの立場になっても、その時にあわてないように、財産の一覧表を作っておいたり、どのように分けるか話し合ったり、事前にできる準備を進めておきましょう。