相続でよくあるトラブル。お金は人を変える。

「うちは大丈夫。」は危険

相続手続きというものは、人生において何度も経験するものではありませんので、どのような手続きをするものなのかよく分からないのが普通です。

そして、身内が入院でもしていて、もう長くは持たないというような状況でもない限り、相続について親族間で話し合うこともなく、どこか他人事のように考えていることと思います。

うちは親戚付き合いも普通にしているし、とくに変わった親戚はいないので、仮に誰かの相続が発生したとしても、「うちは大丈夫。」と思っている方が多いのではないでしょうか。

私は、法律事務所で数多くの相続問題に携わってきましたが、「うちは大丈夫。」と思っていた方が相続トラブルに巻き込まれるケースは数多くあります。亡くなった方の財産がマイナスであろうが、かなりのプラスであろうが関係無く、トラブルは発生します。

相続財産がマイナスの場合は、相続放棄の手続をしてしまえば、ほとんどトラブルになることはありませんが、相続財産が多ければ多いほど、トラブルが発生する可能性が高くなります。

普通に親戚付き合いしていたのになぜそんなことになるのでしょうか?

それにはまず、相続人それぞれの資産状況や、生活状況の違いが関係しております。

「うちは大丈夫。」と思っている方は、自身の家計の状況が健全である場合が多いです。そのため、多少お金が入って来ようが来まいが、生活していく上で問題は全くありません。

それに対し、家計が苦しい状況の場合はどうでしょうか?

突然、お金が入ってくるとなったら、少しでも多く欲しくなってしまうはずです。そして、そのような方の法定相続分(法律で定められた取り分)が多ければまだ良いのですが、他の相続人に比べて少ない場合、話し合いはこじれる場合が多くなります。

次に、亡くなった方の財産がどれだけあるか、調べてみないと分からない、ということも関係しております。

これはどういうことかというと、例えば、相続人が兄弟2人だったとします。

弟は、どうせそんなに財産はないだろうと思い、親と実家で同居して介護していた兄に、全ての遺産を相続させることにしました。その後、遺産を調査したところ、多額の預金があることが判明・・・。その後のことは、想像できると思います。

このようなトラブルも、実際によくあります。

このように、自分は大丈夫だと思っていても、トラブルになることは多くあります。

お金が絡むことは、身内であっても、きっちりしておくことをお勧めします。

「よく分からないから・面倒だから、任せる。」も危険

これも実際によくあるトラブルで、例えば、高齢の方が相続人になった場合、いろいろと動くのも大変だし面倒だからという理由で、他の相続人に手続きを任せてしまうというところから発生します。

そして、作成された書面の内容をよく確認もせず、署名捺印してしまうというものです。

上記の事例でも書いたように、その任された相続人の生活状況が苦しい場合など、実際の法定相続分とかなり違う割合になっていたり、最悪の場合、全てその相続人が相続するという内容の遺産分割協議書に署名捺印させられていた場合もありました。

こうなってしまうと、これを覆すのは大変です。

そうなる前に、よく分からない・面倒ということであれば、利害関係のある他の相続人に任せるのではなく、多少費用がかかっても、弁護士や司法書士、税理士といった専門家に依頼する方が確実です。