【民法改正】遺言書を法務局が保管してくれる制度が創設されます!
民法の相続法が改正され、平成31年から順次施行されていくことは、既にご紹介しておりますが、今回は、その中で最後に施行される「遺言書保管法」について見ていきたいと思います。
「遺言書保管法」の概要
「遺言書保管法」は、相続をめぐる紛争を防止するため、自分で書いた遺言(自筆証書遺言)を法務局で保管及び情報管理するとともに、家庭裁判所の検認手続を不要とする等の措置を講ずることを目的としたものです。
自筆証書遺言は、公正証書遺言・秘密証書遺言のように公証役場に行く必要がなく、自分で気軽に書くことができますが、遺言書の紛失・隠匿・改変等のリスクがある上に、現行法では家庭裁判所による遺言書の「検認」を受ける必要があります。
「検認」とは、家庭裁判所において、相続人の立ち合いのもと(申立人以外の相続人の出席は任意)、遺言書を開封する手続きであり、これにより、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせ、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するものです(遺言の有効・無効を判断する手続きではありません)。
この検認手続きが終わると、その遺言書に「検認済証明書」が編綴されます。
銀行預金の解約や不動産の相続登記の申請は、この「検認済証明書」が編綴された遺言書を提示しないと手続きできませんので、自筆証書遺言の場合には、速やかに検認手続きを受けなければならないのです。
このような自筆証書遺言の問題点を解消するために創設されたのが、「遺言書保管法」になります。
保管制度を利用することのメリット
法務局に遺言書を保管してもらうことのメリットは、次のような点です。
・遺言書の紛失、隠匿、改変等のリスクを回避できる
・遺言書の「検認」が不要となる
・相続登記や預金の解約が早期にできるようになる
法務局という公的機関で厳重に保管されるため、悪意がある相続人によって遺言書が破棄されたり隠匿されたりすることを回避できます。
また、上記のように手間がかかる「検認」手続きが不要となるため、不動産の相続登記手続きや銀行預金の解約手続き等も、今より早くできるようになります。
保管制度を利用することのデメリット
上記のように大きなメリットがありますが、次のようなデメリットもあります。
・遺言者自身が法務局に出頭して保管申請しなければならない
・遺言を撤回する場合も出頭して手続きが必要
・申請費用がかかる
法務局に保管してもらう制度なので、当然のことながら、法務局において手続きする必要があります。
また、申請する際には、手数料を収入印紙で納付する必要があります。
まとめ
上記のようにデメリットもありますが、法務局で安全に保管され、検認手続不要というメリットは大きいと思います。
施行日は平成32年7月10日と、まだまだ先ですが、これにより遺言書を書いてみようかと思う方も増えるかもしれません。
相続に関する紛争を防ぐためにも、「どのような財産がどれだけあるのか」、「誰にどのように分けるか」を明確にしておくことは非常に有効ですので、残された方々の平穏のためにも、遺言書についても考えていただければと思います。
(民法の相続法の改正については、こちらもご覧ください。)